陸屋根(りくやね・ろくやね)は、スタイリッシュな外観が人気の屋根です。
一方で陸屋根の雨漏りしやすいといったデメリットについて、不安に思われる方は多くいます。
本記事では陸屋根が雨漏りしやすい原因や対処方法、予防策などを解説します。
具体的に解説するのは、以下の内容です。
・陸屋根が雨漏りしやすい5つの原因
・雨漏りを招く劣化症状
・陸屋根の雨漏りを修理する方法
・雨漏り修理にかかる費用相場
・雨漏りを発生させないための対策
陸屋根が雨漏りするのは形状以外にも、経年劣化や排水溝の詰まりなども原因になります。
定期的な点検やメンテナンスなどを行うことが、陸屋根の雨漏りを予防するのに効果的です。
本記事を読めば陸屋根が雨漏りする原因を理解でき、適切なメンテナンスや予防策を業者に依頼できます。
もくじ
陸屋根が雨漏りしやすい5つの原因

陸屋根が雨漏りしやすい原因は、以下の5つです。
・傾斜がない
・屋根材がない
・排水溝の詰まり
・施工不良
・経年劣化
上記5つの原因について、くわしく解説します。
傾斜がない
陸屋根は傾斜のある屋根より雨や雪が流れ落ちにくく、雨漏りを起こしやすいです。
雨水にさらされる時間が長くなると、やがて屋根表面の劣化を招いてしまいます。
陸屋根にもゆるやかな傾斜はついているものの、三角屋根と比較すると水はけは悪くなりがちです。
フラットで水の溜まりやすい陸屋根には、適切な防水処理が必要になります。
屋根材がない
他の屋根と異なり、屋根材がないのも雨漏りしやすい原因です。
一般的な住宅は野地板や防水シート、屋根材と重ねることで保護しています。
一方で陸屋根の場合は屋根材が存在しない代わりに、防水層で保護しています。
防水層とは塗料の膜やシートなどで形成された、雨水が入り込むのを防ぐ仕組みです。
防水層の劣化や不具合を起こすと、表面に雨がダイレクトに当たって雨漏りしてしまいます。
陸屋根には屋根材による防水効果がないことも、雨漏りしやすい原因の1つです。
排水溝の詰まり
フラットな形状である陸屋根は、排水溝の詰まりによるトラブルを起こしやすいため要注意です。
陸屋根には雨水を効率良く集め、排水する目的で排水溝が設置されています。
しかし排水溝がゴミや落ち葉などで詰まると、雨水を排水しきれなくなります。
排水溝からあふれた雨水を放置すると、室内に流れ込んで雨漏りする可能性もあり危険です。
また、屋根に溜まった雨水に長時間さらされることで、防水層が劣化するリスクもあります。
排水溝の定期的な清掃やメンテナンスは、陸屋根に雨水が溜まるのを防ぐのに効果的です。
施工不良
防水層を形成する防水工事の施工不良によって、雨漏りを起こす場合もあります。
適切な手順で防水工事が行われないと、施工後早期に不具合を起こしてしまいます。
築年数の浅い住宅で雨漏りした場合、施工不良による可能性が高いです。
経年劣化
経年劣化で防水層による防水機能が低下することも、雨漏りの原因となります。
劣化した防水層は雨水から屋根を保護できなくなり、放置すると雨漏りを起こします。
もともと屋根は雨や紫外線などの影響により、劣化しやすい箇所です。
防水層の経年劣化は避けられないため、定期的な点検やメンテナンスが大切になります。
【放置NG】陸屋根の雨漏りを招く劣化症状

陸屋根の劣化症状を放置すると、雨漏りといった不具合を起こしてしまいます。
以下の症状があれば、なるべく早く修理を依頼してください。
・膨れている箇所がある
・亀裂が入っている
・目地が劣化している
・シートが劣化している
・雑草が生えている
・パラペットが破損している
それぞれの劣化症状について、くわしく解説します。
膨れている箇所がある
陸屋根に膨れを発見した場合、早急に対処が必要です。
膨れは防水層内部に浸入した水分が蒸発し、湿気となり膨らむことで発生します。
膨れを起こした箇所は水が回って防水層も破れやすくなっており、放置すると危険です。
亀裂が入っている
陸屋根に亀裂が入っていると、内部に雨水が浸入しやすくなります。
経年劣化や建物の揺れ、施工不良などが亀裂のおもな原因です。
放置すると深いヒビに進行してしまうため、早めの修理がおすすめです。
目地が劣化している
目地とは、建物同士の間にある隙間やつなぎ目を指します。
陸屋根の目地に使用されているシーリング材は、紫外線により劣化しやすいのが特徴です。
目地の劣化を放置すると雨水が入り込みやすくなり、やがて雨漏りを起こします。
目地のひび割れや剥がれといった劣化症状を発見したら、業者に修理してもらいましょう。
シートが劣化している
シートの劣化は、防水層による防水機能が低下しているサインです。
シートのおもな劣化症状は剥がれやひび割れ、破れなどが挙げられます。
また、シートは経年劣化以外にも、飛来物や鳥が原因で破れることもあります。
雑草が生えている
陸屋根に雑草が生えている場合、自分で抜かず業者に相談してください。
水や栄養を求めて広がった植物の根が、防水層を突き破っている場合もあるためです。
また、植物の根が水分を建物内部に広げてしまうことで、雨漏りする場合もあります。
特に目地や排水溝周辺は雑草が生えやすく、根によって損傷しやすいため要注意です。
パラペットが破損している
パラペットとは陸屋根の外周部分に設置される囲いで、雨水をせき止める役割があります。
経年劣化によって破損すると雨漏りの原因になるため、パラペットも定期的なメンテナンスが必要です。
また、パラペットと防水層の間にある継ぎ目部分は、シーリングや金具などで保護されています。
シーリングや金具の劣化や破損によって隙間ができると、雨漏りしてしまうため要注意です。
陸屋根の雨漏りを修理する方法

陸屋根の雨漏りを修理する方法は、以下になります。
・シートの交換
・アスファルト防水
・塗膜防水
・パラペットの補修
各修理方法についてくわしく解説しますので、参考になれば幸いです。
シートの交換
シート部分の劣化や破損がある場合は、部分補修や交換で対応します。
陸屋根に使用されるのは、ゴムや塩化ビニールでできた防水効果のあるシートです。
部分的な破損や剥がれであれば、熱溶接でシートの再接着処理を行います。
また、軽微な破れや亀裂に対しては、パッチ処理でカバー可能です。
シートの劣化が激しく部分補修で対応できない場合は、全体的な交換となります。
アスファルト防水
アスファルト防水とは、アスファルトを染み込ませた防水シートを重ね合わせて仕上げる工法です。
防水機能が高く耐久性も高いことから、陸屋根にも広く採用されています。
アスファルト防水は、3種類の工法に分けられています。
・常温工法(冷工法)
・トーチ工法
・熱工法
近年では熱を使わずに施工できる、常温工法を採用することが多いです。
常温工法は粘着層をコーティングしたアスファルトシートを、常温のままで張り付けて仕上げます。
塗膜防水
塗膜防水とは液体状の防水材を塗布し、乾燥・硬化させて防水層を形成する工法です。
おもな塗膜防水の種類として、ウレタン防水とFRP防水が挙げられます。
ウレタン防水とはウレタン樹脂を使用する工法で、弾力性のある防水層が特徴です。
一方でFRP防水は、ガラス繊維強化プラスチックと樹脂を組み合わせる工法であり、強度や耐久性が高いです。
どちらを選択するかは、業者に相談して決めると良いでしょう。
パラペットの補修
パラペットを補修する方法は、パラペットの劣化状況によって異なります。
継ぎ目部分にあるシーリング材の劣化があれば、打ち換えで対応します。
打ち換えとは古いシーリング材を撤去し、新しく充填する方法です。
金具の劣化は状況に応じて、補修または交換で対応します。
激しく劣化している場合は、板金による補強やパラペット自体を交換する必要があります。
陸屋根の雨漏り修理にかかる費用相場

陸屋根の雨漏り修理にかかる費用は、修理方法によって異なります。
状況によっては、雨漏りしている原因を特定するための調査費用もかかります。
修理費用と調査費用、それぞれの費用相場を見ていきましょう。
修理費用
雨漏り修理にかかる費用相場は、以下のとおりです。
・シートの交換:4,000円~15,000円
・アスファルト防水:4,500円~22,000円/平方メートル
・ウレタン防水:3,000円~9,000円/平方メートル
・FRP防水:4,000円~13,000円/平方メートル
・パラペットの交換:約6,000円/平方メートル
陸屋根の広さや劣化状況、立地条件などによっても費用は変動します。
調査費用
雨漏り調査にかかる費用は、以下のとおりです。
・目視による調査:無料~3万円
・散水調査:3万円~35万円
・発光液調査:5万円~30万円
・赤外線サーモグラフィー調査:2万円~50万円
目視による調査は、建物の劣化状況を目で見て原因を特定する方法です。
目視で原因が特定できない場合は散水調査や発光液調査、赤外線サーモグラフィー調査を行います。
散水調査とは原因と思われる箇所に水をかけ、雨漏りを再現して調査する方法です。
発光液調査ではブラックライトで発光する塗料を流し、雨漏りの経路を調査します。
赤外線サーモグラフィー調査は、特殊な機械で建物の表面温度差を測定し、原因を特定する方法です。
陸屋根の雨漏りを発生させないための対策

陸屋根の雨漏り予防に効果的な方法は、以下になります。
・排水溝を定期的に掃除する
・勾配を調整する
・屋根を付ける
各方法をくわしく解説しますので、陸屋根の雨漏り予防にお役立てください。
排水溝を定期的に掃除する
雨漏りを防ぐには、排水溝の詰まりを避けることがポイントです。
排水溝を定期的に掃除し、雨水が正常に排水される状態を保つようにします。
特に落ち葉の多い秋や強風が続いた後は、こまめに清掃すると良いでしょう。
勾配を調整する
陸屋根自体の勾配が足りない場合は、調整すると雨漏りしにくくなります。
勾配不足は屋根上に設置した機械や設備、施工時にできた表面の凸凹などが原因です。
モルタルを塗布し勾配を調整した後に、防水層を形成して仕上げます。
ただし勾配調整に必要なモルタルが多すぎて、建物に負担をかけてしまう場合は施工できません。
屋根を付ける
陸屋根の上に屋根を付け、全体をカバーする方法も効果的です。
直接雨水が陸屋根に当たらなくなり、防水層をメンテナンスする手間を減らせます。
施工方法は通常の屋根と同様に、野地板や防水シートを設置した後に、屋根材を張って仕上げます。
屋根の重さで建物に負担をかけないよう、軽い屋根材を選ぶのがおすすめです。
陸屋根の雨漏りを発見したら早めに修理を依頼しよう

フラットな形状の陸屋根は、水はけが悪くなり雨漏りしやすい傾向にあります。
雨漏りを予防するには防水層や排水溝、パラペットのメンテナンスを定期的に行うことが大切です。
もし雨漏りしてしまった場合は必要に応じて調査をしてから、原因に合った修理を行います。
雨漏りを放置すると建物全体に悪影響を及ぼしてしまうため、早めに修理を依頼しましょう。